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RTKとは?リアルキネマティック測位の基礎

2025年2月28日 掲載
2025年3月26日更新
LRTK Phone.jpg

RTKとはリアルタイムキネマティック(Real Time Kinematic)の略称で、衛星測位システム(GNSS)を利用してリアルタイムに高精度な測位を行う技術です​。​

位置が判明している基準局(ベースステーション)のデータをもとに測位誤差を補正し、動いている受信機(移動局)でもセンチメートル級の精度で自分の位置を特定できます​。

測量や土木工事の現場では、RTKによる即時かつ高精度な測位が作業効率の向上や品質確保に不可欠となっており、近年この技術の低価格化と普及が進んで様々な分野で活用が広がっています​。

本記事では、RTKの定義と基本原理、通常のGPS測位との違い、そして土木測量へのメリットや具体的な活用事例について基礎からわかりやすく解説します。

RTKの定義と基本原理

RTKは「相対測位」と呼ばれる測位方式の一種で、少なくとも2つのGNSS受信機(移動局と基準局)を同時に使って位置を求めます。単独の受信機のみで測位する通常の方法とは異なり、2点間の相対的な測位によって共通の誤差を打ち消す仕組みになっています。

 

RTK測位の主な流れ:

  1. 基準局 – 既知の正確な座標位置に設置した基準局が、複数のGNSS衛星からの信号を受信し、自身が測位した位置と実際の既知座標との差(誤差)をリアルタイムで算出します。

  2. 補正データ送信 – 基準局は算出した誤差情報(補正データ)を無線や通信回線を通じて移動局へ送信します。

  3. 移動局 – 移動局(移動体側の受信機)は受信した補正データを用いて、自分の測位結果に補正を適用し、高精度な位置座標を計算します。

RTKの図.png

リアルタイムキネマティックという名称が示す通り、これらの補正は測位と同時進行で行われます。測位結果は現場で即座に得られるため、後処理を待つ必要がなく、その場で位置座標を確認したり測量作業を進めたりできます。RTKは従来のディファレンシャルGPS(DGPS)の発展形とも言え、特にGNSS信号の搬送波位相という波の位相のズレを利用することで、更に精密な測距を可能にしています​。
搬送波の波長は数十センチメートルと短いため、この位相差を解析することで数センチの誤差レベルまで位置を追求できるのです。

なお、高精度な補正を行うためには移動局と基準局の距離があまり離れすぎないことが重要です。一般的に基線長(基準局-移動局間の距離)は10km程度以内で運用することが推奨されます​
これは、離れすぎると両局で共通する誤差(後述)の条件が変わってしまい、補正効果が薄れるためです。近年は国土地理院の電子基準点データやネットワーク型RTKサービス(Ntrip通信など)を利用して長距離でも補正できる仕組みも整ってきていますが、ここでは基本的な単一基準局によるRTK原理を押さえておきましょう。

通常のGPSとの違い – 誤差の原因とRTKによる補正

単独のGPS測位(1台の受信機での測位)では、一般に数メートルから十数メートル程度の誤差が生じます​。
一方、RTK測位を用いると誤差は数センチメートル以内に収まります​。RTKがこれほど高精度な理由は、通常のGPS測位に影響を与える様々な誤差要因を基準局との相対測位によって打ち消しているためです。

GPS測位の主な誤差要因

  • 衛星軌道誤差:衛星の軌道位置のわずかなずれによる誤差

  • 衛星時計誤差:衛星に搭載された原子時計と受信機側の時計の誤差

  • 電離層・対流圏遅延:電離層や対流圏での信号伝播の遅れによる誤差

  • マルチパス誤差:建物や地形による信号の反射・干渉で生じる誤差

  • 受信機ノイズ:受信機内部の電子ノイズや環境電磁誘導による誤差

 

単独測位では上記の誤差要因がすべて積み重なってしまうため、どうしても測位精度に限界があります​。例えば、スマートフォンのGPSで地図上の現在位置が数メートルずれて表示されるのは、これら誤差の影響によるものです。

RTKでは、基準局と移動局が同じ衛星からの信号を受信しているため、衛星軌道誤差や時計誤差、電離層・対流圏遅延といった両局で共通の誤差成分をほぼ打ち消すことができます​。
基準局で得た誤差情報を適用することで、移動局側ではそれらの誤差を差し引いた「より真の位置」に近い測位が可能になるのです。ただし、電波の反射によるマルチパス誤差や各受信機固有のノイズなど、局所的に異なる誤差までは完全には除去できません​。

それでも影響の大きな誤差要因の大半を補正できるため、結果としてRTKでは桁違いに高い測位精度が得られます​。

ご覧のように、RTKを使用することでGPS測位の誤差を飛躍的に小さくできることが分かります。従来は高精度測位と言えば静的な測量や長時間の平均測定が必要でしたが、RTKの登場により移動しながらでも即時にセンチ精度を得ることが可能となりました。この技術革新により、これまでGPSの精度では難しかった作業も GNSS による自動測位で代替・効率化できるようになっています。

RTKのメリットと活用事例

RTKがもたらすメリットは大きく分けて「測位精度の向上」と「作業効率の向上」の二点です。精度が向上することで今まで人手に頼っていた微妙な位置出し作業を機械測位に置き換えられ、効率が上がることで大規模な測量や施工管理も短時間・省人手で実施できるようになります​。ここでは、測量・建設業界を中心に具体的な活用シーンを紹介します。

測量分野でのRTK活用

RTKは土地測量や地形測量で威力を発揮します。従来、測量士がトータルステーション(TS)という光学機器を据えて行っていた丁寧な観測も、RTK-GNSS受信機を使えば短時間でカバーできます。例えば広い造成地の地形を測る場合、ベース局とローバー局のセットを使えば人が歩き回りながらポイントごとの標高や位置を即座に取得でき、人員や手間を大幅に削減できます​。

RTK測位により得た座標は既知点に基づく世界座標系(日本なら世界測地系)で記録されるため、後の図面作成や設計座標との照合もスムーズです。

また、基準点測量にもRTKが活用されています。国土地理院の電子基準点から補正情報をリアルタイムにもらうネットワーク型RTK(GNSS)測量を用いれば、離れた現場でも新たな基準点をセンチ単位で設置可能です。これにより工事現場の測量網づくりも効率化され、従来必要だった長距離のトラバース測量を減らせます。

最近ではドローン(UAV)による写真測量にもRTK-GNSSが搭載されており、地上に多数の標定点を設置せずとも空中写真から正確な地形モデルを作成できるようになっています​。

広大な工事現場を短期間で測量するためにRTK付きUAVを導入した例もあり、上空からリアルタイムに高精度位置補正を行うことで地上設置の標定点作業を削減できたという報告があります

土木施工・建設機械でのRTK活用

土木工事の施工管理でもRTKは重要な役割を担います。国土交通省が提唱するICT施工(スマート施工)では、ブルドーザやショベルなどの建設機械にGNSS受信機を搭載し、作業を自動または半自動で行うマシンガイダンス・マシンコントロールが普及しつつあります​

。例えばブルドーザのブレード(排土板)にRTK-GNSSを取り付けて設計面の高さ通りに自動制御したり、バックホウ(掘削機)にGNSSを載せて地面の掘削ラインを事前の丁張(杭や水糸)なしで掘削したりすることが可能です​。

ロードローラー(転圧機)に搭載して盛土の締固め回数を管理するといった応用例もあり、高精度な位置情報を活用することで重機オペレーターの熟練度に頼らず正確・安全に施工できるようになります​。

出来形管理(完成した土工形状の検測)にもRTK-GNSS測量機が用いられており、従来は人力で多数測点を計測していた作業を、ローバー受信機を持って歩くだけで面的に記録できるようになりました​。

これらにより工事全体の生産性向上と品質確保が両立できるとして、RTKは次世代の建設現場になくてはならない技術となっています。

さらにインフラ分野では、鉄道や道路の維持管理にRTKを活用する動きもあります。例えば鉄道会社では線路の検測や設備管理に高精度な位置把握が求められるため、GNSSやレーザースキャナを組み合わせた計測台車でRTK測位を行い、レールや枕木の歪みを精密に測定する試みが行われています。またトンネルや高架下など衛星信号が届かない環境では利用できないという制約はあるものの、今後は日本の準天頂衛星「みちびき」による補強信号や、IMU(慣性計測装置)との融合によって、RTKを含む高精度測位がさらに幅広い場面で活躍すると期待されています。

土木現場での活用メリット

RTK高精度GPS端末を土木・建設の現場で導入することで、従来の測量・施工管理に様々なメリットが生まれます。

  • 測量精度の向上と即時性:センチメートル単位の精度で位置座標を取得できるため、基準点の設置や水準出しにかかる手間を大幅に削減できます。従来は測量班がトータルステーションや高価なGNSS機器で行っていた高精度測位が、誰でも即座に実行可能になり、出来形管理や設計値との照合をその場で行えます。例えば、LRTKを用いれば従来数メートルの誤差があったスマホGPSでも±2cm程度まで精度向上し、現場で即座に測量結果を得られます。

  • 作業効率と生産性の向上:LRTKは小型軽量で携帯性が高く、現場の作業員一人ひとりが自分専用の測量機として持ち運べます。これにより、「待ち時間ゼロ」で必要な時にすぐ測量でき、複数人が並行して測量作業を進められます。例えば、従来1チームに1台のGNSS機器で順番待ちしていた状況から、各作業者がLRTKを携行して自主的に測定できるようになれば、現場全体の生産性は飛躍的に向上します。また、機器がポケットに入るサイズなので現場内の持ち運びも負担にならず、高所や狭所の測定ポイントにも身軽にアクセス可能です。

  • 省コスト・導入ハードルの低減:従来の高精度GNSS機器や測量機は高額で専門知識も必要でしたが、LRTKは比較的リーズナブルな価格設定で提供されています。スマートフォンと組み合わせて使う設計のため、特別な専用端末を何台も用意する必要がなく、手持ちのスマホを活用できます。ソフトウェアも直感的なアプリになっており、測量の専門家でなくとも短時間のトレーニングで使いこなせるため、中小規模の土木業者でも導入しやすいでしょう。さらに、クラウドサービス込みのサブスクリプションプランも用意されており、初期費用を抑えてスタートすることも可能です。

  • デジタル化と情報共有の促進:LRTKは専用クラウドと連携し、取得した点の座標データや写真を即座にクラウド上の地図にプロットして共有できます。現場で測ったデータはスマホからワンタップでアップロードでき、オフィスのスタッフや協力会社もウェブブラウザで即時に確認・ダウンロード可能です。これにより、紙の図面に手書きで記録して持ち帰る…といった従来の煩雑な作業が不要になり、リアルタイムな情報共有とバックアップが実現します。例えばインフラ点検で橋梁のひび割れ位置を写真撮影すれば、その場で正確な座標と方位付きの記録がクラウドに保存され、後から関係者全員で正確に位置を把握できます。これは維持管理や報告書作成の効率化に大きく貢献します。

  • 過酷環境や災害時での強み:山間部のダム工事や高速道路の山岳トンネル周辺など、携帯電波が届かない現場でもLRTKは威力を発揮します。前述の通りLRTK端末はみちびきのCLASに対応しており、スマホの通信圏外でも衛星経由で補正データを入手できるため、オフライン環境下でもセンチメートル級測位が可能です。実際、2023年の能登半島地震では携帯網が途絶した被災現場にてLRTKが活躍し、被害状況を高精度な位置情報付きで記録・共有するのに貢献しました。災害対応では大掛かりな機材を持ち込めない場合も多いですが、ポケットに収まるLRTKが1台あれば現場状況の迅速な把握・共有に大きな力を発揮します。このように、通信インフラに依存しない測位が行える点は、インフラ点検や防災分野の担当者にとっても大きな安心材料です。

以上のように、LRTKの導入は「精度」「効率」「デジタル化」「信頼性」の各面でメリットをもたらします。土木現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進やi-Constructionの取り組みにおいても、現場からのデータ収集を飛躍的に効率化するツールとして期待できるでしょう。

よくある質問(FAQ)

RTKと通常のGPSとの違いは何ですか?

A: 通常のGPS測位は1台の受信機だけで行い、誤差が数メートル程度発生します。これに対しRTK測位では、基準局と移動局の2台を使い、基準局からの誤差補正を適用することで数センチメートルの精度が得られます。簡単に言えば、RTKは「もう一台のGPSで補正し合うことで精度を上げる仕組み」です。

RTK測位を行うには何が必要ですか?

A: 基本的には「基準局用のGNSS受信機」「移動局用のGNSS受信機(測位したい対象)」「両者を繋ぐ通信手段(無線またはインターネット)」の3つが必要です。加えて、基準局の正確な設置座標値を予め求めておく必要があります。自前で基準局を設置しない場合は、国や民間が提供する基準局ネットワーク(電子基準点やVRSサービス)から補正情報をインターネット経由で取得する方法もあります。

RTKでどのくらいの精度が得られますか?

A: 適切に運用されたRTK測位では、平面位置で誤差が約2~3cm以内、標高でも数センチ程度の精度が得られます。環境条件が良い場合には、それよりさらに高い精度(1cm程度)で測位できることもあります。ただし、周囲に高い建物がある場所や衛星が少ない状況では精度が劣化する場合もあります。

RTK測位はどのくらい離れた距離まで使えますか?

A: 単一の基準局を用いる場合、基準局と移動局の距離が10km以内程度に収まっていることが望ましいとされています。距離が離れるほど大気の状態差などにより補正精度が落ちるためです。より広い範囲で使いたい場合は、電子基準点など複数の基準局データを利用するネットワーク型RTKを使うことで、数十km離れた移動局に対しても高精度な補正が可能です。

測量や土木以外の分野でもRTKは使われていますか?

A: はい、使われています。例えば農業分野ではトラクターの自動走行(自動操舵)にRTKを用いることで、農薬散布や播種を正確に行う精密農業が実現されています。また、ドローン空撮による高精度な測量やマッピング、さらに自動運転車両の位置特定など、位置情報の高精度化が求められる様々な分野でRTK技術が活用されています。

スマートフォンでRTKを利用できますか?

A: はい、近年はスマートフォンでRTK測位を活用することも可能です。スマホに外付けする小型のRTK対応GNSS受信機と専用アプリを使えば、スマホが取得する位置情報をそのままセンチメートル精度に高めることができます。例えば弊社の提供するLRTK Phoneのようなデバイスをスマホに装着すれば、従来の測量機器がなくても手軽に高精度測位を行えます。

RTK対応機器は高価ですか?

A: 従来はRTK-GNSS測量機器一式で数百万円することもありましたが、近年は安価なGNSSモジュールや小型受信機が登場し、個人でも入手しやすくなっています。安価なものでは数十万円以下で購入できる受信機もあり、スマートフォンと組み合わせて使える製品も普及し始めています。高性能なRTK機器ほど高額になる傾向はありますが、必要な精度と機能に応じて手頃な機材を選択できる時代になってきています。

LRTKのご紹介と資料請求のご案内

高精度測位を現場で活用するには、使いやすいRTK対応機器の導入が鍵となります。そこで注目されているのが、弊社が提供するデジタル測位技術 「LRTK」 です​。

LRTKは、RTK-GNSS受信機と専用アプリ・クラウドサービスを組み合わせたソリューションで、初めてRTKを使う方でも簡単にセンチメートル級測位を始められるよう設計されています。

たとえばスマートフォンに後付けするだけで利用できる小型デバイスLRTK Phoneを使えば、スマホで取得する位置情報をそのままcm精度に高めることが可能です​。

専用アンテナ・バッテリーを内蔵した手のひらサイズの受信機をスマホに装着し、アプリを起動するだけで、測量現場でも地図アプリ感覚で高精度な座標を記録できます。写真撮影と同時に計測点の座標を記録するといったことも容易に行え、従来の測量機器がなくても誰でも手軽にRTK測位を活用できる点が大きなメリットです。

 

より本格的な現場向けには、防塵防水・長時間駆動に対応した据え置き型のLRTK Proシリーズも提供されています​。

こちらはアンテナ・GNSS受信機・無線機・バッテリーを一体化した堅牢な端末で、インターネット接続が難しい山間部などでも日本の準天頂衛星システム(QZSS)の補強信号(CLAS)を利用して単独で測位が可能です​。

ポールを傾けても先端位置を補正する傾斜補正機能も備えており、障害物が多い現場での測量にも威力を発揮します​。

さらにユニークな製品として、ヘルメットにアンテナと受信機を内蔵したLRTK ヘルメットも登場しています​。

作業員がヘルメットを被って歩くだけで両手を使わずに測量ができるため、現場の安全性・効率性が飛躍的に向上します。

LRTKで現場の測量精度・作業効率を飛躍的に向上

LRTKシリーズは、建設・土木・測量分野における高精度なGNSS測位を実現し、作業時間短縮や生産性の大幅な向上を可能にします。国土交通省が推進するi-Constructionにも対応しており、建設業界のデジタル化促進に最適なソリューションです。

LRTKの詳細については、下記のリンクよりご覧ください。

 

製品に関するご質問やお見積り、導入検討に関するご相談は、

こちらのお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。ぜひLRTKで、貴社の現場を次のステージへと進化させましょう。

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